阿古屋松の精と阿古屋姫
どんな伝承か
今から九百年ほど昔、一条帝の頃、歌人藤原実方中将は勅命によって陸奥へ下り、名取郡笠島の道祖神の社前まで来たとき、馬が突然棒立ちになって落馬し、そのまま息絶えた。亡骸は遺言により出羽の千歳山の麓に葬られた。都にいた娘の阿古屋姫は父の死を聞いて千歳山を訪ね、庵を結んで菩提を弔ううち、夜ごと通う若者と契りを結んだ。折しも名取川の橋が出水で流され、巫女の告げによって千歳山の老松が橋材に選ばれた。若者は自分がその松の精だと明かして別れ、伐り倒された巨木は動かなくなったが、姫が背に乗ると動きだし、柴田郡の古関を経て名取川のほとりまで運ばれたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
宮城県史 民俗編(茂木徳郎(「妖怪 幽霊」の章)・宮城県史シリーズ)
『宮城県史 民俗編』は宮城県の県史の民俗編で、ここに収めるのは茂木徳郎が執筆した章「妖怪 幽霊」である。山・道・木・水・海・雪・家など出現の場所による分類に沿って妖怪変化を論じ、幽霊とヒトダマ・死霊・生霊の観念を考えたうえで、県内の妖怪・幽霊・動物変化の伝承を郡・町村名を添えて集める。序説・本論・事例篇・参考の順に並び、序説では昭和二十四年の迷信調査と昭和三十年のNHK仙台中央放送局の調査にも触れる。