老マタギを狙った飼い猫の化け物
どんな伝承か
明治初年ころ、本吉郡津山町横山の山地の部落に、源左衛門という六十を越えた老マタギがいた。ある夜、火縄銃の手入れをして弾丸を十発用意していると、炉辺の年経たトラ猫が薄目でそれを見ていた。翌朝の猟はその日に限って獲物がなく、黄昏に灯の見える見馴れぬ一軒家を見つけた。中では恐ろしい顔の老婆が繕いものをしている。化生の物と見て撃ち込んだが平気で、老婆は「もう弾丸はあるまい」と嘲る。源爺が腹掛けに秘蔵した命弾を行灯めがけて放つと、悲鳴とともに灯も家も消えた。翌朝行ってみると老婆の死骸があり、朝日が射すと大猫の正体をあらわした。帰宅すると飼い猫は前夜から姿を消していたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
宮城県史 民俗編(茂木徳郎(「妖怪 幽霊」の章)・宮城県史シリーズ)
『宮城県史 民俗編』は宮城県の県史の民俗編で、ここに収めるのは茂木徳郎が執筆した章「妖怪 幽霊」である。山・道・木・水・海・雪・家など出現の場所による分類に沿って妖怪変化を論じ、幽霊とヒトダマ・死霊・生霊の観念を考えたうえで、県内の妖怪・幽霊・動物変化の伝承を郡・町村名を添えて集める。序説・本論・事例篇・参考の順に並び、序説では昭和二十四年の迷信調査と昭和三十年のNHK仙台中央放送局の調査にも触れる。