雪隠で妻女に手を斬られた河童
どんな伝承か
筑後国柳川、立花家の家臣の妻女が寺に詣でた折、茶屋の一人の美童が知り人のように挨拶し、近づいて手を握ろうとした。妻女がこれを払いのけ、寺堂に籠って香を焚いていると、また童が来て手を執って誘おうとするので、怒って手を捻った。童は泣きながら去った。妻女が帰宅し雪隠に入ると、下から手が伸びて局所をまさぐってきた。妻女がいきなり懐剣でその手を切ると、三本指・長爪・蒼黒で皮の滑らかな手であった。しばらくして童が現れ、河童だと名乗り、手を返してほしいと懇願した。「夜窓鬼談」に見える話である。
原典より
しばらくすると童がきて、手を返してほしいと懇願した。—— 怪談の世界(山田野理夫・1978年(昭和53年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
怪談の世界(山田野理夫・1978年(昭和53年))
『怪談の世界』は、山田野理夫が昭和五十三年に著した怪談の研究随筆である。遠野での佐々木喜善と柳田国男の出会いから説き起こし、家・山・木・石・道・水・火に現れる妖怪、憑き物、鬼と天狗、生霊・死霊・幽霊の話を、著者の聞き書きや各地の民俗資料、古典・芝居から集め、沖縄の話で結ぶ。章立ては江馬務と柳田国男の妖怪分類を参考にしたもので、民俗学の資料と文学作品の両面から怪談をとらえようとしている。