雨月物語・吉備津の釜と磯良の怨霊
どんな伝承か
上田秋成『雨月物語』巻之三「吉備津の釜」による。吉備国賀夜郡庭瀬の井沢庄太夫の子正太郎は放蕩者で、吉備津神社の神主香央の娘磯良を娶ることになった。婚儀に先立つ鳴釜の神事は凶と出て音を発しなかったが、そのまま嫁入りとなる。正太郎は磯良によく仕えられながら遊女袖になじみ、磯良を欺いて金を奪い袖と京へ逃げた。裏切られた磯良は病に臥して死に、怨霊となって袖を取り殺す。播磨へ逃れた正太郎は物忌みの果ての最後の夜に消え失せ、軒下には髻だけが残っていたという。
原典より
正太郎は気がつくと、そこは荒野の三昧堂で仏のみあって、草屋などはない。—— 怪談の世界(山田野理夫・1978年(昭和53年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
怪談の世界(山田野理夫・1978年(昭和53年))
『怪談の世界』は、山田野理夫が昭和五十三年に著した怪談の研究随筆である。遠野での佐々木喜善と柳田国男の出会いから説き起こし、家・山・木・石・道・水・火に現れる妖怪、憑き物、鬼と天狗、生霊・死霊・幽霊の話を、著者の聞き書きや各地の民俗資料、古典・芝居から集め、沖縄の話で結ぶ。章立ては江馬務と柳田国男の妖怪分類を参考にしたもので、民俗学の資料と文学作品の両面から怪談をとらえようとしている。