水門を開けてまわる赤舌
どんな伝承か
津軽地方にあった話である。その年、下の村の百姓たちは田植えの季節だというのに雨が降らず、田に水を引けずに困り果てた。雨乞いも無駄で、上ノ村に水を分けてくれと申し入れても水門は開いてくれない。下の村の百姓の一人が水門に忍び寄って開けようとしたが、上の村の百姓に見つかって打ち殺され、上ノ村は浪人どもを雇っていっそう警戒を固めた。ところがある日、下の村の田に水がどんどん落ちてきた。上ノ村では誰がいつ水門を開けたのか分からず、いくら閉めてもまたいつの間にか開いていた。これは赤舌の仕業である。赤舌は河童に似るが頭に皿がなく、体は赤く、いつも赤い舌を出している。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
東北怪談の旅(山田野理夫・1974年(昭和49年))
『東北怪談の旅』は、山田野理夫が昭和四十九年に編んだ東北地方の怪談集である。青森・秋田・岩手・宮城・山形・福島の六県に伝わる妖怪や幽霊の話、飢饉と間引にまつわる話、江戸時代の奇談などを、一番から一六三番までの短い話として収める。各話の末尾に県名を記し、恐山や飢饉の記録にふれて東北の怪談と怨念を結びつけるまえがきと、怪談観や霊能者をめぐる回想を記したあとがきを付す。