白矢が立つ村の人身御供と狒狒
どんな伝承か
水沢在のある村の話。屋根に白い矢が立つと、その家は娘を人身御供として山の祠へ差し出す決まりで、年に二、三度はそれがあった。天明の年、長者の屋敷の上に白矢が立つ。三日のうちに娘を出さねばならず、夫婦は泣き崩れた。手代が身代わりを探しに出るが引き受ける者はない。帰り道の大雨に軒を借りた家で、病の母を抱えた娘が薬代と引き換えに承知した。娘は白木の長持に入れられ祠へ運ばれる。山風が鳴り、狒狒が蓋を開けて呑もうとしたとき、娘が日ごろ念じる仏の名を唱えると、狒狒の皮が剝がれて美しい若者になった。神隠しに遭った者だと長者は言い、娘はその嫁になったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
東北怪談の旅(山田野理夫・1974年(昭和49年))
『東北怪談の旅』は、山田野理夫が昭和四十九年に編んだ東北地方の怪談集である。青森・秋田・岩手・宮城・山形・福島の六県に伝わる妖怪や幽霊の話、飢饉と間引にまつわる話、江戸時代の奇談などを、一番から一六三番までの短い話として収める。各話の末尾に県名を記し、恐山や飢饉の記録にふれて東北の怪談と怨念を結びつけるまえがきと、怪談観や霊能者をめぐる回想を記したあとがきを付す。