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幾度も引き返す自転車の男

所在地東京都葛飾区
出典妖奇怪談集

どんな伝承か

大東京の新市内にはまだ田舎めいた場所が残っていた。葛飾区の町はずれ、竹藪に挟まれた細い一本道を三丁ほど行かなければ人家の集まる通りには出られない。K君は借り物の懐中電灯で足元を照らしながら家路を急いでいた。藪の中ほどまで来たとき、警鈴を鳴らして自転車の男が向かってきたので、道の端に寄ってやり過ごした。目の大きな、口のひきつった、子どもほどに小柄な男である。ふたたび歩き出すと、また同じ音が近づき、よけて見上げると先ほどと同じ顔だった。狭い一本道で引き返せるはずはない。K君は鈴の音を背に夢中で駆け出した。

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※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません

出典の文献について

妖奇怪談集(山門王吉・1936年(昭和11年))

『妖奇怪談集』は、山門王吉が著し、東亞書房が昭和十一年七月七日に発行した怪談集である。序に言うとおり、白昼の銀座で死んだはずの友人にマッチを借りる話や円タクに乗る亡霊、トンネルの狂女など、当時の実話に取材した新感覚の話を主とし、旧来の型の話を二篇添える。巻頭の「怪談コント一束」は闇の声や消えた女など七つの小話から成り、続いて「銀座の悪夢」から「生首を盗む女」まで七篇を収め、巻末に奥付と同書房の満洲案内書などの広告を載せる。

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