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疫神が判を押した与野の念仏帳

所在地埼玉県さいたま市中央区
年代伝承(口承)
登場(類話)
出典幽冥界研究資料 第二巻 靈怪談淵

どんな伝承か

正嘉のころ、疫病が各地にはやって多くの死者が出た。武蔵国足立郡与野の郷の名主は念仏の信者で、家族そろって翌日から特別の念仏を始めることにし、全員の名を書いた番帳を持仏堂に納めた。その夜、名主の夢に異形の疫神の群れが村を練り歩き、家に入りかけたので、念仏の番帳があると告げると、見せよと言う。差し出すと疫神は名の下にひとつずつ判を押していった。よそへ嫁いでいる長女の名も書き加えたいと頼んだが許されなかった。翌朝見ると番帳には血のような色の拙い判が並んでいた。村では大勢が病んだが名主の家は誰も罹らず、よそにいた長女だけが病死した。この番帳は評判になり、足利将軍家に召し寄せられたという。

原典より

その翌朝彼の番帳を出して見ると、不思議にも、一人毎に名の下に判形があつて、いろは文字を書損じたやうな拙劣な判形で、その色は血のやうであつた。—— 幽冥界研究資料 第二巻 靈怪談淵(岡田蒼溟・幽冥界研究・怪談) より引用
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※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません

出典の文献について

幽冥界研究資料 第二巻 靈怪談淵(岡田蒼溟・幽冥界研究・怪談)

『幽冥界研究資料 第二巻 靈怪談淵』は、岡田蒼溟による霊怪の事例集である。祟る石、出雲の瀧姫行者、神西湖の妖怪、但馬の抜け首、黄金の精、海の牛鬼、天狗などの怪異を、著者自身の見聞や知人の談話、古い文書からの移載によって集め、明治・大正期の出雲や松江周辺の事例を多く含む。項目によっては【解題】や註を添え、事例の後に「第二編」と附録の「天狗考」を続け、巻末の「解説の欄」で生霊・疫神・物体の飛来などを心霊研究の立場から論じる。

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