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「好思案」と叫ぶ声が響いた猟師の谷

所在地山口県岩国市関戸イヤツケ浴(好思案谷)
年代江戸期
登場重富総左衛門、或る猟師、村人(谷の本名を問われた)
出典岩邑怪談録

どんな伝承か

ある猟師が関戸村のイヤツケ浴に至り、夕方、鳥屋に籠って雉の出るのを待っていた。ふと見ると蝦蟇が鳥居の前を這っている。そこへどこからか蛇が叢から出て蝦蟇を捕えて呑み、続いて雉が来てその蛇を呑んだ。猟師はよい獲物だと鉄砲を狙い定めたが、たちまち因果応報のことを思い出し、いま雉を殺せば自分もどんな憂き目に遭うか分からぬと悟って鉄砲を控え、長居は無用と鳥屋を出た。二、三足行くうち、後ろの林から山も崩れるばかりの大声で「好思案、好思案」と繰り返し喚く者があった。猟師は大いに驚き、跡も顧みず走り帰り、二度とその浴に入らなかった。これを伝え聞いた他の猟師も立ち入らなくなり、ついに好思案谷と呼ぶようになった。

原典より

或る猟師、関戸村イヤツケ浴に至り、或日夕方に、鳥屋にこもり居て、雉の出るを待けるに、ふと見れば、蝦蟆、鳥居の前を這へり。—— 岩邑怪談録(広瀬喜尚(増補:今田純一/続録・編:藤田葆/付録:静間密/昭和版編集:宮田伊津美)・1976年(昭和51年)) より引用
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※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません

出典の文献について

岩邑怪談録(広瀬喜尚(増補:今田純一/続録・編:藤田葆/付録:静間密/昭和版編集:宮田伊津美)・1976年(昭和51年))

『岩邑怪談録』は、岩国藩士広瀬喜尚の怪談録に後人の増補と続録を合わせ、岩国徴古館が昭和五十一年に発行した資料集である。岩国周辺で人々が出会った化物・大坊主・生首・怪火・狐狸・天狗倒し・幽霊などの話を収め、藤田葆が編んだ『岩国沿革志』のうちの二冊を底本に、なるべく原文のまま新字に改めて載せる。広瀬の本録に、今田純一の追加、藤田の続怪談録と実事談・変死、静間密の付録五話を続け、巻末に語注を付す。

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