普済寺の裏山に十日燃えた青い火
どんな伝承か
明治三十四年の冬、普済寺の黙禅和尚(野坂)は人々に向かって、寺の裏山の東の尾根先、東の座敷のすぐ近くで、夜ごとに青い火が燃え出して長いあいだ消えないと話した。このあたりには新しい墓もあって実に怪しい、決して作り話ではないから皆で見に来てほしいと言うので、実際に見に行った人もいたが、たしかに火は出ていた。火は十日ばかり続いたのち、ぱったりと出なくなった。筆者は、昔から墓で火が燃えるといわれるのはこれのことで、燐の火であって怪火でも狐火でもないと結んでいる。
原典より
明治三十四年冬、普済寺和尚黙禅師野坂、人二向テ言ヘルニ、「此頃寺ノ後ロノ山、東ノ尾鼻ニテ寺/東/座敷ヨリ至テ近キ所ニ、夜々青キ火、燃へ出テ永ク滅セズ。—— 岩邑怪談録(広瀬喜尚(増補:今田純一/続録・編:藤田葆/付録:静間密/昭和版編集:宮田伊津美)・1976年(昭和51年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
岩邑怪談録(広瀬喜尚(増補:今田純一/続録・編:藤田葆/付録:静間密/昭和版編集:宮田伊津美)・1976年(昭和51年))
『岩邑怪談録』は、岩国藩士広瀬喜尚の怪談録に後人の増補と続録を合わせ、岩国徴古館が昭和五十一年に発行した資料集である。岩国周辺で人々が出会った化物・大坊主・生首・怪火・狐狸・天狗倒し・幽霊などの話を収め、藤田葆が編んだ『岩国沿革志』のうちの二冊を底本に、なるべく原文のまま新字に改めて載せる。広瀬の本録に、今田純一の追加、藤田の続怪談録と実事談・変死、静間密の付録五話を続け、巻末に語注を付す。