山路で薪を下ろしていた白髪の山女
どんな伝承か
筆者は明治十四年から十七、八年ごろにかけて山代へたびたび通い、その地の怪談を数多く聞いた。番頭が桟道で絶世の美女とすれ違い、店へ駆け戻るなり倒れて三月も病んだ話の翌日のことである。筆者は小学校訓導の安武為三と連れ立って同じ山路を越えた。すると道端に一人の老女が薪を下ろして休んでいた。頭は雪のように白く、全身が白く痩せていて、この世の人とは思えない。筆者がこれこそ世にいう山女だと言うと、安武は、そのとおり、まさに仙に化そうとしている者だと答え、二人はそのまま通り過ぎたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
岩邑怪談録(広瀬喜尚(増補:今田純一/続録・編:藤田葆/付録:静間密/昭和版編集:宮田伊津美)・1976年(昭和51年))
『岩邑怪談録』は、岩国藩士広瀬喜尚の怪談録に後人の増補と続録を合わせ、岩国徴古館が昭和五十一年に発行した資料集である。岩国周辺で人々が出会った化物・大坊主・生首・怪火・狐狸・天狗倒し・幽霊などの話を収め、藤田葆が編んだ『岩国沿革志』のうちの二冊を底本に、なるべく原文のまま新字に改めて載せる。広瀬の本録に、今田純一の追加、藤田の続怪談録と実事談・変死、静間密の付録五話を続け、巻末に語注を付す。