山伏に斬りつけた三春家中の乱心
どんな伝承か
延享二年、三春家中の三宅藤左衛門の家来・沖介が、殿の見送りで須賀川まで行った帰り、守山領手代木村で突然に乱心した。脇差を抜いて山伏の寄明院の家へ踏み込み、寄明院の左肩を切りつけ、そのまま郷中を回った。手代木村と三春領赤沼村の庄屋・村役人らが協議し、寄明院へ療治金二両を出させることで示談となった。同じ一件の証文でも、赤沼側はあくまで「乱心」と書いて酒には一言もふれず、手代木側は「乱酒」「酒狂」と酒の上の事故であることを強調している。乱心か酒狂かで責任能力の判断が変わったからである。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
疫病と狐憑き-近世庶民の医療事情(昼田源四郎・昭和中期(推定))
本書は江戸時代の陸奥奥州守山藩領における『御用留帳』を史料とした、近世農村の医療事情と心霊現象の研究である。狐憑きや物付きなどの精神疾患が、祈禱や指籠入れ(座敷牢)によって治療された実例を14件詳述する。天明・天保の飢饉や流行疫病(疱瘡、麻疹、コレラ等)への対応と並行して、乱心者の社会的処遇、責任能力の鑑別問題、欠落(逃亡)との区別が論じられている。