稲生祭で開帳されるばけもの槌
どんな伝承か
毎年一月七日、広島市の国前寺では稲生祭が営まれ、ふだん門外不出の如意宝ばけもの槌がこの日だけ開帳される。太鼓の響きのなか疋田英親住職ら七人の僧が経を上げると、古びた木の厨子が運び込まれ、扉の奥のガラス越しに斜めに立てかけた木槌が見えた。儀式が終わっても厨子はしばらく開いたままにされる。そのとき参拝者とは様子の違う若者が間近でカメラを向けると、居合わせた人がおびえた顔で、そんなことをしたら命がないと強くたしなめたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
妖怪伝説奇聞(東雅夫・2005年(平成17年))
『妖怪伝説奇聞』は、東雅夫が二〇〇五年に学習研究社から刊行した妖怪伝承地の探訪記である。稲生物怪録の木槌、クダン、牛鬼、塵輪、ナメラスジ、八幡の藪知らず、鬼の骨、蛇骨、鍋島の怪猫、児啼爺などを追い、中国・四国・九州ほか各地の寺社や旧家を訪ねて遺物と伝承を確かめる。月刊誌「ムー」の連載「日本伝説紀行」の十二章を三つのカラーグラビアで区切り、巻末に草双紙『鍋島猫騒動』の復刻を添える。