死後に響いた叩鉦と読経の音
どんな伝承か
作家長田幹彦の体験。三月八日、東京に妙な大風が吹いた午後、明治神宮外苑を散歩した帰り、信濃町の停留所の角で、娘の嫁ぎ先の姑『おすがおばさん』が風をよけて立っているのに出会った。おばさんはいつもと違い押し黙り、何か言いたげにこちらを見つめて本郷西方町の家へ帰っていった。それから一月ほどして彼女は急逝する。死の数日前から長田の耳には彼女の声で病状を告げる霊聴が届き、死後三日目の未明からは、隣室の古い仏壇のあたりで叩鉦の音と読経の声が響く怪異が続いたという。
原典より
悪い旅行 三浦朱門三つの幽霊 遠藤周作黄色いマフラー 柴田錬三郎お化けの会ができるまで 平野威馬雄幽霊の実験 大高興宇宙人 桝井寿郎怪談詮議 水木しげる・山田野理夫・桝井寿郎イタコの謎を追う(抄) 中岡俊哉—— 私は幽霊を見た(東雅夫(編)・MF文庫ダ・ヴィンチ) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
私は幽霊を見た(東雅夫(編)・MF文庫ダ・ヴィンチ)
『私は幽霊を見た――現代怪談実話傑作選』は、東雅夫が編んだ怪談実話のアンソロジーで、メディアファクトリーのMF文庫ダ・ヴィンチの一冊である。平山蘆江・火野葦平・佐藤春夫・徳川夢声・遠藤周作・柴田錬三郎から石原慎太郎・新倉イワオ・稲川淳二まで、作家や文化人が自ら見聞きした幽霊や怪異を書いた文章を集める。目次には二十三篇と編者解説が並び、水木しげる・山田野理夫・桝井寿郎の座談「怪談詮議」や中岡俊哉「イタコの謎を追う」の抄録も含む。