タクシーに乗った幽霊
どんな伝承か
昭和九年の秋、流しのタクシーが京都大学付属病院前で、桔梗の模様の長い着物を着た娘を「芦屋まで」という約束で乗せた。芦屋の前田某という標札のかかった石の門前で車を停めると、娘は金を貰ってくるからと言って門内へ入ったきり戻らない。運転手が車代を請求に行くと女中はそんな人は来ていないと言うが、騒ぎを聞いて出てきた留守居の中年の婦人は、娘の風采を聞くと驚いた様子ですぐに料金を払った。後日、運転手は同僚から、前田家の娘が結核で京大付属病院に入院しており、娘を車に乗せたのとほとんど同時刻に亡くなっていたことを聞かされた。娘の容姿は運転手が見たものとまったく同じであったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
霊魂の世界 ― 心霊科学入門(板谷樹・宮沢虎雄・1971年(昭和46年))
『霊魂の世界――心霊科学入門』は、板谷樹と宮沢虎雄が昭和四十六年に著した心霊科学の入門書である。古代の霊魂観や内外の幽霊の記録に始まり、ハイズビル事件と英米の心霊研究学会の創立、霊視・霊言などの精神的現象、物質化や心霊写真などの物理的現象、心霊治療、死と再生までを、日本心霊科学協会での実験や勝五郎再生の現地調査を交えて述べる。全十二章からなり、昭和四十二年に徳間書店から出た同題の本に筆を加え、同協会が自費出版したものである。