恐山のイタコに降りた親友と女の霊
どんな伝承か
恐山でイタコに親友の血脇啓寿を招いてもらったときのこと。降りてきた血脇は延命に力を尽くしてくれた礼を述べ、二人だけの内輪の話にまで及んだ。その途中でイタコが急に苦しみ出し、別の仏が割り込んできたと言う。呼んでもいない女の霊だった。イタコは数珠を打ち鳴らし、脂汗を浮かべて追い返そうとしたが去らない。仕方なく用件を問うと、霊は満州であなたに命を救われた者だと名乗った。帰国して立ち直ろうとした矢先に不治の癌を告げられ、望みを失って自ら死んだのだと泣いた。著者は後になって、大連の老虎灘で投身しかけた娘を助けた記憶を思い当たったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
私は幽霊を見た(東雅夫(編)・MF文庫ダ・ヴィンチ)
『私は幽霊を見た――現代怪談実話傑作選』は、東雅夫が編んだ怪談実話のアンソロジーで、メディアファクトリーのMF文庫ダ・ヴィンチの一冊である。平山蘆江・火野葦平・佐藤春夫・徳川夢声・遠藤周作・柴田錬三郎から石原慎太郎・新倉イワオ・稲川淳二まで、作家や文化人が自ら見聞きした幽霊や怪異を書いた文章を集める。目次には二十三篇と編者解説が並び、水木しげる・山田野理夫・桝井寿郎の座談「怪談詮議」や中岡俊哉「イタコの謎を追う」の抄録も含む。