閻魔に帰され閻魔を信仰した稲葉さん
どんな伝承か
群馬県桐生市の稲葉真さんが三十代の頃、風邪をこじらせて肺炎にかかり、高熱にうなされて寝込んだ。苦しむうちに意識は「あの世」へたどり着いたという。そこへ閻魔大王が現れ、「お前はまだ早すぎるから帰れ」と告げられ、はっと目を覚ますと家の中に戻っていた。その後、新宿を歩いていた折に大宗寺の付け紐閻魔像を見たことをきっかけに、閻魔信仰を始めるようになった。足が悪くなり歩けなくなってからは、家族が代わりに参詣するようになったという。稲葉さんは翌年、九十三歳で亡くなった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・2003年(平成15年))
『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』は、松谷みよ子が編んだ現代の民話の聞き書き集で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。一九七八年に発刊された『民話の手帖』を通じて全国から寄せられた回答を中心に、臨死体験、死の知らせ、寺へ来る死者、生まれかわりの話を収める。「あの世へ行った話」「死の話」「生まれかわり」の三章の冒頭に編者の論考を置き、細目ごとに所在地・話者・出典を添えた類話を並べる。