血の池に沈む女と紅白の餅
どんな伝承か
昭和三十五、六年頃の話。房子という女童子がいた。四歳で母を、九歳で父を亡くし、親類に預けられて育った。凶作の年が多く、預け先でも食う物がなくてつらく、あの世の父母のもとへ行きたいと思うようになった。ある晩、泣きながら眠ると、夢の中で花のいっぱい咲いた世界に行き着いた。少し高い所に亡くなった父が立ち、傍らには恐ろしい顔の男が鉄棒を持っている。父は「求道一念」と書いた板か紙を示し、これを見よ、誰にも言うな、早く戻れという意味を仕草で伝えた。近くの池には長い髪を垂らした裸の女が立ち、みるみる血の池に変わって沈んでいった。房子は恐ろしくなって戻り、途中で見知らぬ人から紅白の餅をもらったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・2003年(平成15年))
『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』は、松谷みよ子が編んだ現代の民話の聞き書き集で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。一九七八年に発刊された『民話の手帖』を通じて全国から寄せられた回答を中心に、臨死体験、死の知らせ、寺へ来る死者、生まれかわりの話を収める。「あの世へ行った話」「死の話」「生まれかわり」の三章の冒頭に編者の論考を置き、細目ごとに所在地・話者・出典を添えた類話を並べる。