湖の舟で迎えに来た亡き姪
どんな伝承か
明治の末か大正の初めごろの話だという。語り手の母が七歳ごろ大病で死にかけたとき、すでに亡くなっていた母の姪が、澄みきった湖に浮かぶ舟に乗って近づいてきた。妙なる楽の音が聞こえ、蓮の花が一面に咲いていたという。姪の名を呼び続ける娘に、両親ははっとして仏壇に手を合わせ、線香を上げて迎えに来ないよう必死に頼んだ。すると姪は突然こわい顔をして娘を突きとばすように遠くへ去り、泣き叫んだ娘はやがて正気を取り戻して命を助かったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・2003年(平成15年))
『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』は、松谷みよ子が編んだ現代の民話の聞き書き集で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。一九七八年に発刊された『民話の手帖』を通じて全国から寄せられた回答を中心に、臨死体験、死の知らせ、寺へ来る死者、生まれかわりの話を収める。「あの世へ行った話」「死の話」「生まれかわり」の三章の冒頭に編者の論考を置き、細目ごとに所在地・話者・出典を添えた類話を並べる。