影となって語る師匠の霊
どんな伝承か
二年前の冬、下北半島の恐山を訪れ、霊能者に霊を呼んでもらったときのこと。霊能者が何事か呟きはじめると、まず亡くなった親が出てきて、次に師匠が現れた。師匠は「よく遠いところまで来てくれたね。私は姿を見せられないので、影となってこうして話をするしか仕方がないんだよ」と語り、方々から呼ばれるようになった弟子のことを喜んだ。あと三年丈夫でいて子や弟子に教え伝えたかったが、体が弱り、立ち木の枯れるごとく倒れてしまい、どれほど良い医師にかかっても逃れられない運命だったという。死んでもエンマ様やアミダ如来にも許され、極楽で蓮の花の上に座り、後から来た妻と仲良く暮らしているから心配するなと告げたそうである。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・2003年(平成15年))
『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』は、松谷みよ子が編んだ現代の民話の聞き書き集で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。一九七八年に発刊された『民話の手帖』を通じて全国から寄せられた回答を中心に、臨死体験、死の知らせ、寺へ来る死者、生まれかわりの話を収める。「あの世へ行った話」「死の話」「生まれかわり」の三章の冒頭に編者の論考を置き、細目ごとに所在地・話者・出典を添えた類話を並べる。