下駄の音で叔父を訪ねた母
どんな伝承か
昭和二十五年、あまんきみこさんの母は胃癌で亡くなった。その日の朝、母は「今日あなたが遠いところへ行くような気がする」と語り、夜には気分がよくなって娘の将来について話をしたのち、眠るように昏睡状態になった。明け方に発した最後の言葉は「下駄を出してちょうだい」だった。母の死の知らせに駆けつけたT叔父は、明け方に下駄の音がして玄関の扉が開く気配を聞いたという。母は生前、困ったことがあればT叔父を頼るよう娘に言い残していた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・2003年(平成15年))
『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』は、松谷みよ子が編んだ現代の民話の聞き書き集で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。一九七八年に発刊された『民話の手帖』を通じて全国から寄せられた回答を中心に、臨死体験、死の知らせ、寺へ来る死者、生まれかわりの話を収める。「あの世へ行った話」「死の話」「生まれかわり」の三章の冒頭に編者の論考を置き、細目ごとに所在地・話者・出典を添えた類話を並べる。