稲光に浮かんだ母の名と鼠
どんな伝承か
水戸から横須賀に嫁いだヨネ子さんは、けちな姑に里帰りをなかなか許されずにいた。ある朝姑が急に実家へ帰ってよいと言うので、急いで横須賀線に乗った。大船駅に着くころ、晴れていた空がにわかに曇って雷が鳴り、稲光の中に実母の名が浮かんで見えた。水戸の実家に着くと、母はさっき雷に打たれて死んだと告げられた。その後も姑は墓参りを許さず、ヨネ子さんが仏壇に母の助けを念じると、その夜、鼠など出たことのない家で姑が足の指をかじられた。気味悪がった姑は墓参りを許し、ヨネ子さんは鼠になって来てくれた母に手を合わせたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・2003年(平成15年))
『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』は、松谷みよ子が編んだ現代の民話の聞き書き集で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。一九七八年に発刊された『民話の手帖』を通じて全国から寄せられた回答を中心に、臨死体験、死の知らせ、寺へ来る死者、生まれかわりの話を収める。「あの世へ行った話」「死の話」「生まれかわり」の三章の冒頭に編者の論考を置き、細目ごとに所在地・話者・出典を添えた類話を並べる。