転げ落ちた位牌と和尚の予言
どんな伝承か
京都府嵐山での話。語り手が十八、九歳で禅の修行をしていた頃、有名な大徳であった和尚は、時々朝起きると「今日は檀家のうちに死んだ者がある」と言い、その予言が必ず当たった。ある日の夕方、和尚が他の弟子を連れて山を降り、語り手が留守を頼まれた。十二時過ぎ、一陣の風が満山の梢を揺らしたと思うと、本堂の方で伽藍も壊れるかという響きがした。恐る恐る手燭を点して本堂を隈なく探したが異変はなく、位牌の並ぶ所に一つだけ位牌が転げ落ちていた。翌朝それを話すと和尚は某家の娘が死んだのだろうと言い、まもなくその家の使いが娘の死を告げに来た。
原典より
死の床にある人を囲んで、親類縁者がいまかいまかとみまもっていると、病人はむっくりと起きあがり、「お釈迦さまに会ってきた。—— 現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・2003年(平成15年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・2003年(平成15年))
『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』は、松谷みよ子が編んだ現代の民話の聞き書き集で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。一九七八年に発刊された『民話の手帖』を通じて全国から寄せられた回答を中心に、臨死体験、死の知らせ、寺へ来る死者、生まれかわりの話を収める。「あの世へ行った話」「死の話」「生まれかわり」の三章の冒頭に編者の論考を置き、細目ごとに所在地・話者・出典を添えた類話を並べる。