菊寿司へ帰ろうとした消える乗客
どんな伝承か
学校のキャンプで五年生担当の教師が生徒に語った、志木や新座あたりのタクシー仲間の噂話。深夜、野火止用水のあたりで中年の男を乗せると、新座市役所の近くにある菊寿司という寿司屋まで行ってくれと言う。店の前に着いて声をかけ、振り向くと客の姿は消えていた。数年前にその場所で交通事故に遭って亡くなった菊寿司の主人が、家に帰ろうとしてタクシーを呼び止めたのだろうと噂された。同じ目に遭った運転手は何人もいて、今ではそのあたりで男が手を挙げても、タクシーは止まってくれないという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・2003年(平成15年))
『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』は、松谷みよ子が編んだ現代の民話の聞き書き集で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。一九七八年に発刊された『民話の手帖』を通じて全国から寄せられた回答を中心に、臨死体験、死の知らせ、寺へ来る死者、生まれかわりの話を収める。「あの世へ行った話」「死の話」「生まれかわり」の三章の冒頭に編者の論考を置き、細目ごとに所在地・話者・出典を添えた類話を並べる。