口寄せで戻りたいと告げた次男
どんな伝承か
明治三十三年ごろ、港北区鳥山の三会寺のそばの農家で、五つばかりの次男が亡くなった。あきらめきれない両親は、二里ほど離れた二ツ谷町辺りに住む老女に口寄せを頼んだ。子の言葉として伝えられたのは、もう一度皆のそばへ戻りたいので、姉は登校の途中に地蔵へ石を供え、母はもう一度身ごもってほしいという願いだった。以後、幼い姉が毎朝、中川の堤の一本松の下の祠に手を合わせる姿が見られ、やがてその家に次男が戻ってきたと信じられる男の子が生まれた。今度こそ早死にさせまいと、縁起のよい千蔵という名が付けられたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・2003年(平成15年))
『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』は、松谷みよ子が編んだ現代の民話の聞き書き集で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。一九七八年に発刊された『民話の手帖』を通じて全国から寄せられた回答を中心に、臨死体験、死の知らせ、寺へ来る死者、生まれかわりの話を収める。「あの世へ行った話」「死の話」「生まれかわり」の三章の冒頭に編者の論考を置き、細目ごとに所在地・話者・出典を添えた類話を並べる。