仲間を背負って泳いだ遠泳競技
どんな伝承か
昭和十七年の夏ごろ、横須賀港で海軍の遠泳競技が催された。五人で一組になって泳ぐ団体戦で、増田梅太郎さんの班は二位から落ちない勢いで健闘していた。ところが途中で仲間の一人がけいれんを起こしてしまう。この競技は五人がそろって同時にゴールしなければ認められないため、増田さんはその一人を背負って泳ぎ続けた。ようやく着いたときには十数組のうち六位まで下がっており、優勝には届かなかったものの特別賞を受け、しばらくは誇らしい顔をしていられたという。
原典より
競技は五人全員が同時着でなければいけない。—— 現代民話考 ― 軍隊(松谷みよ子・民話・口承文芸) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 軍隊(松谷みよ子・民話・口承文芸)
『現代民話考 ― 軍隊』は、松谷みよ子が編んだ、軍隊と戦争をめぐる現代の民話の集成である。日本民話の会の雑誌『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞き書きによって寄せられた話をもとに、十五年戦争を中心に徴兵検査から新兵のしごき、戦地、虐殺や飢え、敗戦、収容所、戦犯、軍隊生活の怪談までを収める。巻頭に序文「明日の民話のために」と論考「軍隊考」を置き、十三の部に分けた各話の末に話者と回答者の名と在住地を記す。