上官の飯に入れた頭のフケ
どんな伝承か
弘前東部第五十七部隊にいた者の話である。昭和十九年の暮れから終戦後にかけて、口やかましい上官には兵たちがひそかな仕返しをした。上官のもとへ運ぶ飯に、自分の頭のふけを落として混ぜるのである。麦飯や高粱飯であれば色に紛れて気づかれることはない。食べた上官は、理由の分からぬまま下痢が止まらなくなった。上官への恨みは「フケ飯を食わせるぞ」というひと言で言い表され、兵の間で交わされたと藤井逸郎は書き残している。
原典より
部下をよくいびる上官の軍力のさやに兵隊たちが醤油をいれておいた。—— 現代民話考 ― 軍隊(松谷みよ子・民話・口承文芸) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 軍隊(松谷みよ子・民話・口承文芸)
『現代民話考 ― 軍隊』は、松谷みよ子が編んだ、軍隊と戦争をめぐる現代の民話の集成である。日本民話の会の雑誌『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞き書きによって寄せられた話をもとに、十五年戦争を中心に徴兵検査から新兵のしごき、戦地、虐殺や飢え、敗戦、収容所、戦犯、軍隊生活の怪談までを収める。巻頭に序文「明日の民話のために」と論考「軍隊考」を置き、十三の部に分けた各話の末に話者と回答者の名と在住地を記す。