白夜のキスカ島と四メートルの時化
どんな伝承か
語り手は青森県大湊の第四十一海軍航空廠飛行機課から、飛行機応急修理班工員十五名の責任者として、キスカ島の第四五二海軍航空隊に軍属として配属された。昭和十七年十月六日に上陸し、十八年六月四日に伊二号潜水艦で脱出するまでを過ごした。内地では想像もつかない気象で、一月の日の出は午前五時、日没は午後一時三十分、冬期は白夜で慰問の手紙が読めるほどの明るさだった。ベーリング海は台風の墓場と呼ばれ、風は毎日二十メートル前後、西風かと思えば北風に変わる。昭和十八年一月四日の時化はすさまじく、波の高さは四メートルを超え、海岸の物資も繋留中の飛行機十機もめちゃめちゃにされたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 軍隊(松谷みよ子・民話・口承文芸)
『現代民話考 ― 軍隊』は、松谷みよ子が編んだ、軍隊と戦争をめぐる現代の民話の集成である。日本民話の会の雑誌『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞き書きによって寄せられた話をもとに、十五年戦争を中心に徴兵検査から新兵のしごき、戦地、虐殺や飢え、敗戦、収容所、戦犯、軍隊生活の怪談までを収める。巻頭に序文「明日の民話のために」と論考「軍隊考」を置き、十三の部に分けた各話の末に話者と回答者の名と在住地を記す。