魔王と化した新院と告げ鳥
どんな伝承か
白峰の御陵での続きで、雨月物語を引いた条。新院は高々と笑って、近ごろの世の乱れはすべて自分の仕業だと明かす。生きていたころから魔道に心を寄せ、保元と平治の乱を起こさせ、死んでからは朝廷に災いをなしている、やがて天下に大乱を起こしてみせる、と言うのである。西行が涙をこらえて王道の筋を説き、重ねて諫めると、新院は義朝や信西に報い、暲子門院の命を奪い、忠通にも祟ったが、それでも胸の火は収まらず、ついに魔王となって三百余類を従えるに至ったと答えた。やがて天地が揺れ、山が崩れるような音とともに座の下から火が燃え上がり、顔は朱を注いだよう、髪は膝まで乱れ、目を吊り上げた新院が空へ呼ばわると、鳶に似た怪鳥が翔けて来て、重盛の寿命がまもなく尽き、平家一門の滅びも遠くないと告げた。
原典より
* 頼豪阿闍梨の怨靈* 鼠と成て祟る* 蛇體になった清姬* 幽霊主家を断絶さす* 乃木大将と女の幽靈* 幽霊に取殺されて甦る* 一家を絶やす外國婦人* 幽霊が迎に* 仇を返す怨靈—— 幽霊は語る(梶天真・1938年(昭和13年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
幽霊は語る(梶天真・1938年(昭和13年))
『幽霊は語る』は、梶天真が編んだ幽霊譚と幽霊論の集成で、昭和十三年に文明社から出た。新聞・雑誌の記事や井上円了・柳田國男・高峰博らの所説、古典の文を出典を添えて引き、葬送の習俗や布哇の霊魂観から説く幽霊思想、幻覚や網膜による説明、乃木大将が見た我が子の幽霊などの実話を集める。三篇に分かれ、第二篇は男女の幽霊・怨霊・生霊・小児の見た幽霊・前知らせなど八項、第三篇は幽霊写真・化物屋敷・霊界通信を扱い、巻末を夕張と筑前の幽霊問答で結ぶ。