釜の首の淵のウワバミと白い鱗
どんな伝承か
東祖谷山村小島字平の木村佐左衛門は西山猟師の許しを受けた猟の名手で、八幡大菩薩と刻んだ鉄丸を持っていた。ある日、佐野から笛付石まで登ってシカ笛を吹いていると、草原が波打ち、箕ほどもある口を開いたウワバミが迫ってきた。佐左衛門は一喝して鉄丸を放ち、急所を撃たれたウワバミは山を逃げ下って、小島谷の釜の首の淵に頭を突っ込んで息絶えた。手を貸す者がいないため、佐左衛門は手斧を借りて鱗を二枚はぎ取り、西祖谷山村善徳の土居田窪八郎に贈った。鱗は菓子盆ほどの大きさで純白だったが、田窪家の火事で焼けたという。淵には雌が今もいるとも伝わる。
原典より
ウワバミは力つきて、小島谷の釜の首の淵まで来ると、淵の中に頭を突込んで息が絶えた。—— 阿波の怪談(横山春陽・郷土怪談・民俗・1958年(昭和33年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
阿波の怪談(横山春陽・郷土怪談・民俗・1958年(昭和33年))
『阿波の怪談』は、横山春陽が昭和三十三年に編み、徳島新聞出版部から発行した郷土の怪談集である。徳島県の各地と土佐との国境の山中に伝わる山女郎、淵や池の主、カッパ、亡霊、火の玉、タヌキやキツネ、大ジャの話を、平安朝の言い伝えから藩政期、明治・大正、昭和の出来事まで、編者が古老に聞き、書物から拾って題ごとに並べる。おわりにでカッパやヘビの話の多い地域や海の話の少なさについて記す。