蓮池城の怨霊と渡守の奇遇
どんな伝承か
渡守の常七がある静かな晩、仁淀川の渡船小屋で草鞋を作っていると、対岸から「渡船」と呼ぶ声がした。舟を出して迎えに行くと、姿は見えぬのに数人が乗り移る気配がして舟が重くなった。声は「これは蓮池左京殿である。不義奸佞の者どもに思い知らせんと大高坂へ越すところだ、その方には咎めはない」と告げ、舟はいつの間にか東の岸に着いていた。親実ら八人の死後、その墓所には怪火が飛び、当たった者は死ぬなどの怪異が続き、八人御先の怨霊の噂が大高坂を中心に高まったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の怪談(田中貢太郎・河出文庫・1985年(昭和60年))
『日本の怪談』は、田中貢太郎の怪談を昭和四十五年桃源社刊『日本怪談全集』から抜き出した文庫本で、昭和六十年十二月に河出書房新社から発行された。「宝蔵の短刀」「八人みさきの話」など土佐の城下や村の話をはじめ、江戸・京・吉野などを舞台にした幽霊・狐狸・猿・魔物の話を、会話の多い語り口で収める。二十七篇の後に尾崎秀樹の解説を付し、高知に生まれた作者の生涯と怪談・妖異譚への傾倒をたどっている。