山崎家の古狸を退治した恩返しの蟇
どんな伝承か
作家佐佐木味津三の故郷は北設楽郡下津具村で、夫人克子の生家は隣村上津具の医家山崎家である。天保前、山崎の本家は次男弁助を分家させて上津具の中町に住まわせた。そこは武田信玄の金奉行依田某の邸址といわれ、弁助に子がなく久しく空家であった。弘化頃、本家が婿養子の元厚を迎えて後を嗣がせ、夫婦が中町の家に入ると怪異が続いた。薬鑵がひとりでに転がり歩き、畳が持ち上がり、大入道が出た。ある晩、天井で大きな物音がした後、元厚の夢に「名倉道で狸に殺されかけたのを助けられた恩返しに狸を殺した。私は蟇です」と告げる者が現れ、翌朝、天井には大狸が死んでいた。以後怪異は絶え、蟇は守神として山崎家に付き従ったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪談実話(田中貢太郎・河出文庫・1938年(昭和13年))
『日本怪談実話』は、田中貢太郎が昭和十三年に著した実話怪談集を河出文庫に収めたものである。明治以降に著者が聞き集めた怪異を報告調の短文で綴り、戦地の霊験や戦死者の知らせ、狐狸・天狗・海坊主、トンネルや自動車に現れる女、幽霊写真、狐狗狸などを扱う。元本は改造社刊の『新怪談集(実話篇)』で、冕言に始まって二百を超える小話を並べ、巻末に川奈まり子の解説を付す。