夜汽車と並んで飛んだ青い大火の玉
どんな伝承か
明治四十一年十二月二十七日の夜、早稲田大学の学生だった鴨井雅治は、同郷の友人荒木輝男と冬休みに東北へ向かう夜汽車に乗っていた。石油ランプの薄暗い車内で、東那須野駅の少し手前に差しかかったころ、霙まじりの雨が窓を打ち、列車は雑木林を抜けて広い平原へ出た。突然向かいの荒木の顔が明るくなったので振り向くと、窓の外を直径二間はありそうな青く楕円形の大きな火の玉が飛んでいた。火の玉は列車から二、三十間離れ、地上五尺ほどの高さを光を強めたり弱めたりしながら四十秒ほど並走したが、急に叩き落とされたように落下して砕け、花火の星が降るように散って消えた。
原典より
* 帽子のない水兵 (337)* 狸の信号提灯 (338)* 妖女の舞踏する踏切 (340)* 怪火に浮ぶ白衣の男 (341)* 隧道内の怪火 (341)* 鉄道線路を走る少年 (342)*…—— 日本怪談実話(田中貢太郎・河出文庫・1938年(昭和13年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪談実話(田中貢太郎・河出文庫・1938年(昭和13年))
『日本怪談実話』は、田中貢太郎が昭和十三年に著した実話怪談集を河出文庫に収めたものである。明治以降に著者が聞き集めた怪異を報告調の短文で綴り、戦地の霊験や戦死者の知らせ、狐狸・天狗・海坊主、トンネルや自動車に現れる女、幽霊写真、狐狗狸などを扱う。元本は改造社刊の『新怪談集(実話篇)』で、冕言に始まって二百を超える小話を並べ、巻末に川奈まり子の解説を付す。