三十里先の線路を走っていた少年
どんな伝承か
大正十一年七月二十二日、甲府市外相川村の相沢富雄(十一)は友達と山へ花摘みに行ったまま姿を消した。家族が村総出で捜すなか、夕方になって長野県西筑摩郡日義村から、少年を保護しているとの電報が届いた。相川村から日義村までは約三十里も離れており、駆けつけた父の話では、富雄は夕刻、日義村の線路を『お父さん』と泣きながら走っていたという。子供の足で半日に歩ける距離ではなく、常識では計れない出来事だったと語られている。
原典より
* 旅客の気絶する隧道 (344)* 新有楽橋の妖異 (344)* 消えて無くなる処女 (345)* 松井須磨子の写真 (346)* レンズに現われた女の姿 (347)* 幽霊写真 (348)*…—— 日本怪談実話(田中貢太郎・河出文庫・1938年(昭和13年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪談実話(田中貢太郎・河出文庫・1938年(昭和13年))
『日本怪談実話』は、田中貢太郎が昭和十三年に著した実話怪談集を河出文庫に収めたものである。明治以降に著者が聞き集めた怪異を報告調の短文で綴り、戦地の霊験や戦死者の知らせ、狐狸・天狗・海坊主、トンネルや自動車に現れる女、幽霊写真、狐狗狸などを扱う。元本は改造社刊の『新怪談集(実話篇)』で、冕言に始まって二百を超える小話を並べ、巻末に川奈まり子の解説を付す。