能代川の堤の冷たい水
どんな伝承か
明治の末期のこと。秋田の能代町の傍を流れる能代川の川口で、砂利を採っていた男が横波をくらって舟が転覆し溺死した。知り合いの者が死体を探しに行ったが、夜になっても見つからず、川の向こう側の堤を帰った。一行は三人で、皆黙って歩いていたが、後ろを歩いていた男が慌てて前の男を追い越して真ん中に入り、首筋へ水が垂れたような気がしたと言って首筋を撫でた。すると前の男も後ろにされた男も目を見はり、おまえもそうかと言い合った。三人は近くの家に入って休んだが、どの顔も血の気が失せていたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪談実話(田中貢太郎・河出文庫・1938年(昭和13年))
『日本怪談実話』は、田中貢太郎が昭和十三年に著した実話怪談集を河出文庫に収めたものである。明治以降に著者が聞き集めた怪異を報告調の短文で綴り、戦地の霊験や戦死者の知らせ、狐狸・天狗・海坊主、トンネルや自動車に現れる女、幽霊写真、狐狗狸などを扱う。元本は改造社刊の『新怪談集(実話篇)』で、冕言に始まって二百を超える小話を並べ、巻末に川奈まり子の解説を付す。