手術後に見上げた透明な自分
どんな伝承か
名古屋のS・Sさんは一九八四年にガンの手術を受け、麻酔から覚めかけたときに奇妙な体験をした。最初は下の肉体の側にいて、上にふわりと浮かぶ白く透けたものの顔を見上げ、それが自分だとすぐにわかった。その後、意識は浮いているほうへ移ったが、下は暗く、そこに自分の肉体があるのかは見分けられなかったという。見る主体が肉体の側にあった点で、魂が抜けるとする説とは食い違い、精神医学でいう自己像幻視、いわゆるドッペルゲンガーに近いと著者は見る。分身を見るこの現象は江戸時代には影の病い、離魂病と呼ばれ、見た者は間もなく死ぬとも言われた。
原典より
ふと気がつくと、下のほうから私自身が、上のほうのフワッと浮いている白い透明感のあるものの顔を、『あれは私自身だ』と確認するところからはじまりました—— 臨死体験(立花隆)(立花隆・臨死体験・ノンフィクション) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
臨死体験(立花隆)(立花隆・臨死体験・ノンフィクション)
『臨死体験(立花隆)』は、立花隆が著したノンフィクションである。一九九一年三月放送のNHKスペシャルのための取材を出発点に、日本と欧米の体験者の証言、キュブラー・ロスやムーディら研究者への聞き取り、「文藝春秋」連載中に寄せられた体験談を収める。体外離脱、光の体験、文化による体験の差、感覚遮断や脳の仕組みを章ごとに論じ、末尾で現実体験説と脳内現象説を比べたうえで、著者は基本的に脳内現象説に立つと述べる。