顔をなでた白い自分
どんな伝承か
自己像幻視はさまざまな原因で起こる。脳血管障害や脳腫瘍、脳炎のほか中毒や幻覚剤、てんかんや精神の疾患でも生じるし、病気でなくとも疲れているときや眠りに入るときに現れることがある。直観の鋭い人や芸術家に突然起こる例も報告されている。東京都文京区の根石和子は五十七歳。五年前に胃と膵臓と脾臓を切除する手術を受け、集中治療室に戻ってまだ麻酔がかかっていたときに体験した。周囲には誰もいなかったはずである。寝ている自分のそばに白い人が来て、見ると自分と同じ顔をしていた。その人が顔をなでてくれ、手はひどく冷たかったが、恐ろしさはなく穏やかだったという。家族はガラス越しにしか入れず、なでることはできなかった。
原典より
前にも述べたが、このような自己像幻視はさまざまな原因で起こることが知られている。—— 臨死体験(立花隆)(立花隆・臨死体験・ノンフィクション) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
臨死体験(立花隆)(立花隆・臨死体験・ノンフィクション)
『臨死体験(立花隆)』は、立花隆が著したノンフィクションである。一九九一年三月放送のNHKスペシャルのための取材を出発点に、日本と欧米の体験者の証言、キュブラー・ロスやムーディら研究者への聞き取り、「文藝春秋」連載中に寄せられた体験談を収める。体外離脱、光の体験、文化による体験の差、感覚遮断や脳の仕組みを章ごとに論じ、末尾で現実体験説と脳内現象説を比べたうえで、著者は基本的に脳内現象説に立つと述べる。