三途の川と天井から見た病室
どんな伝承か
新潟県で貸スキー業を営む大平満さんは、二十五歳のとき胃潰瘍で下血と吐血を繰り返して入院し、トイレから戻ったところで倒れ、五日間意識が途切れては戻る状態が続いた。初日は暗がりで足元を流れる大きな川の水をすくって飲み、橋を探すうちに目覚めた。翌日は川底に光る小石を見ながら泳いで渡り、写真でしか知らない先代に、まだ来るなと諭されて送り返された。三日目には水の上を歩いて花の咲く対岸へ向かった。三日目から五日目には頭から体を抜け出し、病室の天井から医者や家族を見下ろし、体と糸でつながったまま病院中を透かし見たという。
原典より
写真でしか見たことがない先代がいて、『お前はまだ来るな』とか、『向こうに橋があるから戻んなさい』というようなことをいって途中まで送ってきてくれる。—— 臨死体験(立花隆)(立花隆・臨死体験・ノンフィクション) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
臨死体験(立花隆)(立花隆・臨死体験・ノンフィクション)
『臨死体験(立花隆)』は、立花隆が著したノンフィクションである。一九九一年三月放送のNHKスペシャルのための取材を出発点に、日本と欧米の体験者の証言、キュブラー・ロスやムーディら研究者への聞き取り、「文藝春秋」連載中に寄せられた体験談を収める。体外離脱、光の体験、文化による体験の差、感覚遮断や脳の仕組みを章ごとに論じ、末尾で現実体験説と脳内現象説を比べたうえで、著者は基本的に脳内現象説に立つと述べる。