四か月ぶりに帰った才一郎と御山の盃
どんな伝承か
屋根から姿を消して四か月目の慶応四年三月十六日、夜八つ時過ぎに、才一郎はもとの姿のまま、ひょっこり師の柳田泰治の家に帰って来た。裏の高塀のあたりで物音がし、雨戸ががらりと開いたので家の者は皆おののいた。才一郎は神前で父に会いたいと言い、呼ばれた父の才亮、続いて泰治と太郎馬が神前に手をついて拝すると、三尺坊様の供え物のお下がりと、御山で皆が用いた盃を差し出した。三尺坊から持たせてやれと言われて持って来たもので、一同は謹んで頂戴したという。
原典より
さて、問題の十七歳少年が、あの屋上から飛行昇天を行なってから四ヵ月目の慶応四年三月十六日の夜八ツ時(午前二時)過ぎ、ひょっこり恩師柳田先生の宅へ元の姿で帰って来たのである。—— 近代日本霊異実録(笠井鎮夫・霊異・神憑り実録・1966年(昭和41年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
近代日本霊異実録(笠井鎮夫・霊異・神憑り実録・1966年(昭和41年))
『近代日本霊異実録』は、笠井鎮夫が著して昭和四十一年に昭森社から初版を出した、幕末から近代の神憑りと霊異の記録で、ここに収めるのは昭和四十八年に山雅房から出た複刻版である。金光教・黒住教・天理教・大本の教祖の神憑り、井上正鉄の求道、宮地常磐・堅磐父子や河野至道の神仙譚、天狗の弟子寅吉の話、長南年恵の奇跡などを、手記・写本・旧著を引いて語る。全十二録からなり、第一録には金光教に入信した著者の父の手記を収め、巻末にあとがきと著者略歴を置く。