元旦の夜に見た神殿と亡夫
どんな伝承か
明治二十五年正月元旦の夜、機縁の熟した開祖出口直の身は俄然、神人合一の境に入った。夢か現か、漂渺たる神境に進み入ると、宮殿楼閣が棟を並べて立ち、その荘厳美麗はたとえようもなかった。正面の門を入ると中央に大兵肥満で長い鬚を八束に余す大神が坐しており、開祖の手を取って奥深く導いた。さらに艮の方へ進むと、金銀珠玉で飾られた幾倍も雄大な正殿があり、麗しい大神に見つめられた。やがて別の麗しい屋舎で、往年亡くなった夫政五郎とありし日のまま再会し、既往と将来を語り合った。この光景を愛児に語り聞かせようと夫に別れを告げると、忽然として元の破屋の我が身に返ったという。
原典より
時は明治二十五年正月元旦の夜のことなりき、機縁円熟せる開祖の身は、爰に俄然として自然の一大飛躍を遂げて神人合一の境に入り、…—— 近代日本霊異実録(笠井鎮夫・霊異・神憑り実録・1966年(昭和41年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
近代日本霊異実録(笠井鎮夫・霊異・神憑り実録・1966年(昭和41年))
『近代日本霊異実録』は、笠井鎮夫が著して昭和四十一年に昭森社から初版を出した、幕末から近代の神憑りと霊異の記録で、ここに収めるのは昭和四十八年に山雅房から出た複刻版である。金光教・黒住教・天理教・大本の教祖の神憑り、井上正鉄の求道、宮地常磐・堅磐父子や河野至道の神仙譚、天狗の弟子寅吉の話、長南年恵の奇跡などを、手記・写本・旧著を引いて語る。全十二録からなり、第一録には金光教に入信した著者の父の手記を収め、巻末にあとがきと著者略歴を置く。