赤谷川源流の岩陰ユウノクボ
どんな伝承か
谷川岳南麓の富士新田で生まれた猟師石倉篤太郎さんは、クマが歩き回る季節はオスと呼ぶ圧殺罠で捕り、雪が降ってクマが冬ごもりすると、穴の中のクマを槍で突くアナグマ狩りに移った。その猟場は富士新田の奥、谷川岳西方の万太郎山の南斜面にあたる赤谷川や小出俣川の源流部で、阿弥陀沢と金山沢が合わさって赤谷川となる辺りに「ユウノクボ」と呼ばれる庇型の岩陰がある。ユウは岩の訛りという。石倉さんはここを拠点に数日から一週間ほど泊まり込んだ。富士新田から三、四時間歩いて昼ごろ着くと何日分もの薪を集め、ひと抱えもある生木を燃やし続けるので、岩が温まり真冬の夜もさほど寒くなかったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
村の奇譚 ― 里の遺風(筒井功・民俗・地誌・2018年(平成30年))
『村の奇譚 ― 里の遺風』は、民俗研究者の筒井功が平成三十年に著した民俗探訪記である。修験の里の石室、石風呂と焼き石湯、山中の贋金づくり、箕作りの集団や天幕部落、岩窟に暮らした非定住民、猿と猟師、氷室と風穴、産屋、墓制、安倍晴明の墓、狐憑きと犬神など、各地の村に残る習俗と伝承を、聞き取りと文献の両面からたどる。全十三章で、昭和三十年前後の高知市での見聞から説き起こし、「おわりに」では別の出版社で刊行が見送られた経緯を記す。