常円寺の参道に立つ安産の犬卒塔婆
どんな伝承か
茨城県鉾田市青柳にある曹洞宗常円寺の参道入口に、表面を削って墨で字を書いた高さ六十センチほどのY字形の木が七本並んでいた。南無六導や畜犬帰依などと書かれ、施主として青柳の中の小字、瀬古や沖の女人講の名が記されている。隣家の女性(一九三〇年生まれ)によれば、土地では犬供養と呼び、安産を願って立てるもので、若い女だけの講に入った人が年に一度、自分で採ってきた又木を削り、字は寺の僧に書いてもらうという。近くでこれをするのは青柳だけかもしれないとも語った。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
村の奇譚 ― 里の遺風(筒井功・民俗・地誌・2018年(平成30年))
『村の奇譚 ― 里の遺風』は、民俗研究者の筒井功が平成三十年に著した民俗探訪記である。修験の里の石室、石風呂と焼き石湯、山中の贋金づくり、箕作りの集団や天幕部落、岩窟に暮らした非定住民、猿と猟師、氷室と風穴、産屋、墓制、安倍晴明の墓、狐憑きと犬神など、各地の村に残る習俗と伝承を、聞き取りと文献の両面からたどる。全十三章で、昭和三十年前後の高知市での見聞から説き起こし、「おわりに」では別の出版社で刊行が見送られた経緯を記す。