想念を集中して治した半身不随
どんな伝承か
高輪に住んでいたころ、すぐ近くに共同通信の社員がいて、その亭主は三十九歳という若さで、しかも酒も煙草もいっさいやらないというのに脳溢血で倒れ右半身不随になってしまった。見舞いに行くと、蒲団の上にすわって口はしゃべれるが右の手足がまるっきり動かない。著者は帰ってから、死んではいないが賦活できる脳細胞があるかもしれないと考え、真夜中に三十分くらい想念をその人の脳めがけて集中してみた。次の晩、右手の指を動かしてみろと言うとちゃんと動き、手も頭の上へすっと上がった。二、三日で立って歩けるようになり、ひと月ほど休んだだけで杖をつきながら出勤できるようになった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
山とお化けと自然界(西丸震哉・山岳・怪異エッセイ・1990年(平成2年))
『山とお化けと自然界』は、西丸震哉が旧著三冊を編み直し、一九九〇年に文庫版あとがきを付けた随筆集である。山や湿原の探検、チョウや小動物とのつき合い、酒の話とともに、横尾谷の岩小屋で出会った幽霊、木曾御岳の人魂、亡兄との交信、テレパシー、呪い殺しの実験、雨やみの術など、著者自身の体験した怪異をつづる。生き物・酒・山・兄との交信の四部からなり、あとがきに『未知への足入れ』『山だ原始人だ幽霊だ』『山の動物誌』を元にしたと記す。