甲斐駒直下の白骨と失踪青年
どんな伝承か
西丸震哉は以前、甲斐駒ヶ岳の頂上から南方の谷底で白骨死体を見たことがあった。かなり古いもので、骨の間から草が生え、木に引っかかった骨もあった。土地のガイド・アラワシに尋ねると、彼も同じ白骨を見ていた。昭和二年ごろ、頂上直下の九合目あたりの尾根に焚き火の跡を残しただけで行方不明になった若者があり、地元で何度も捜索したが分からず、その父親はあきらめきれず一人で山に入り続けたという。西丸はその白骨を失踪した息子のものと考えたが、アラワシは「そっとしておいたほうがよい」と語り、二人はそのままにしておくことにした。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
山とお化けと自然界(西丸震哉・山岳・怪異エッセイ・1990年(平成2年))
『山とお化けと自然界』は、西丸震哉が旧著三冊を編み直し、一九九〇年に文庫版あとがきを付けた随筆集である。山や湿原の探検、チョウや小動物とのつき合い、酒の話とともに、横尾谷の岩小屋で出会った幽霊、木曾御岳の人魂、亡兄との交信、テレパシー、呪い殺しの実験、雨やみの術など、著者自身の体験した怪異をつづる。生き物・酒・山・兄との交信の四部からなり、あとがきに『未知への足入れ』『山だ原始人だ幽霊だ』『山の動物誌』を元にしたと記す。