夜中に餅を盗む一ツ目の来訪
どんな伝承か
山形市の黒沢温泉に現れる一ツ目には、もう一つの伝えがある。来る時期はやはり一二月八日と三〇日であるが、日中ではなく夜中で、人が寝ているうちに餅を取って行く。夜中なのでほとんど目撃されていないが、まれに目撃されるとすさまじい速さで逃げて行き、その後に変わったことは何も起こらない。来年の悪を餅の中に閉じ込めて持って行ってもらうという考えもあるという。語り手は、戸締まりを忘れて寝た家に飢えたほかい人が入り込み、餅を盗んで行ったのだろうと見ている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
怪異雑考4-新妖異変(高橋敏弘・西郊民俗・現在(著作時点)、複数時代の怪異を収録)
本書は東北地方、特に山形県を中心とした民間怪異の実例集である。山形県置賜地方に伝わるガイラゴの3つの異なる型(ナメクジ型・蛙型・巨大カエル型)を詳述し、同一の名称を持ちながら形態と性質が大きく異なる妖怪の伝承の多様性を示す。また一ツ目妖怪については東京から山形まで広域に分布し、神様的信仰から放浪者の盗難行為まで複数の解釈が可能であることを示唆している。最後にポルターガイスト現象を天狗の仕業と解釈する事例を紹介。