橋材に伐られた千歳山の松の精
どんな伝承か
一条天皇の代、歌論の争いから奥州へ下された藤原実方は、名取郡笠島の道祖神の社前で馬に落とされて命を落とし、遺言のとおり出羽の千歳山の麓に埋められた。父の死を信じられぬ娘の阿古屋姫は出羽へ下り、山麓に小庵を結んで弔ううち、夜ごと通ってくる若者と契りを結んだ。折しも名取川の橋がたびたび流されるため、祈禱師の告げに従って千歳山の老松が橋材に選ばれる。杣人が斧を入れても翌朝には樹皮が元に戻り、伐り屑を焼いてようやく倒せた。若者は前夜、自分は千歳山の松の精だと明かして去る。松は動かなかったが、阿古屋姫がさすって乗ると軽々と滑り出したという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
怪談の世界(山田野理夫・1978年(昭和53年))
『怪談の世界』は、山田野理夫が昭和五十三年に著した怪談の研究随筆である。遠野での佐々木喜善と柳田国男の出会いから説き起こし、家・山・木・石・道・水・火に現れる妖怪、憑き物、鬼と天狗、生霊・死霊・幽霊の話を、著者の聞き書きや各地の民俗資料、古典・芝居から集め、沖縄の話で結ぶ。章立ては江馬務と柳田国男の妖怪分類を参考にしたもので、民俗学の資料と文学作品の両面から怪談をとらえようとしている。