伊勢へ詣でた善左エ門の松
どんな伝承か
ある年の秋の彼岸が過ぎたころ、雄物川のほとりにある水沢の里に、土崎港下四ツ屋村から五人の者が酒や肴の手土産を持って、松右エ門の家はどこかと訪ねてきた。里にその名を知る者はなく、一行は肝煎の善左エ門の家に立ち寄って訳を話した。昨年の伊勢詣りで、久保田領河辺の郡水沢に住む松右エ門と名のる白髪の老人と道連れになり、何くれとなく世話になったので、その礼に来たのだという。村人は、村はずれの一族の総墓にある老松、善左エ門の松と呼ばれる数百年の松が急に枯れはじめ、秋の彼岸のころに生き返ったことを思い出した。松の精が人の姿を借りて伊勢へ詣でたのだと語り合い、老松の下で祝いを催して松の精を祀ったという。
原典より
<高木―「上方参りの松」 柳田―「関の大杉」>ある年の秋の彼岸が過ぎたころのことだったど。—— 日本伝説大系 第2巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第2巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第2巻』は、岩手・宮城・秋田の三県に伝わる伝説を話の型ごとに集めた伝説資料集である。山の争いや沼の主の手紙、巨人の足跡、八郎太郎、ザシキワラシ、河童、掃部長者などの伝説を、口承の聞き書きと近世以降の地誌・縁起から採る。凡例のとおり各項は伝承地を示した例話を冒頭に据え、〔類話〕〔文献〕〔参考〕を続け、柳田・高木による話型名を添えた項もある。