九段坂上を埋めた群衆と黒煙
どんな伝承か
堀端をたどって九段までたどり着くと、坂の上は避難する人で埋まっていた。群衆はまるで奔流のように押し合い、先を争って殺気立ち、殴り合いを始める者までいる。そのはずで、その頃には市内の数十か所から火の手が上がっていた。中原歯科学校から出た火は横風に乗って坂の行く手をふさぎ、おそろしい黒煙を吹き上げている。運転手は見ているこちらが不安になるほど動転しており、車は牛込へ回って堀端へ抜けた。その間にもひどい揺り返しが来て、思わずハンドルから手を離してしまうのだった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
私の心霊術(長田幹彦・昭和中期(1940年代~1950年代推定))
幼少期の地獄極楽のぞきからくり(私の心霊術)/心霊術と降霊の実演/作家長田幹彦の心霊体験/交霊と幽霊との接触/明治〜昭和の心霊文化