温かいまま運ばれた死体
どんな伝承か
空襲で急死した顕官の埋葬に、著者は立ち会った。死後三日目の夜、同僚数人に守られて棺は染井の墓地へ運ばれたが、道々で妙な音がするので釘を抜いて蓋を開けると、経帷子の間から青白い手がのぞいていた。恐る恐る触れてみると、腕のあたりがぼうっと温かい。医師の小川も温もりが残っていると認め、荷車で西片町の病院へ運んで診察台で調べた。心音はなく体温計も動かないのに、耳の下から採った僅かな血では赤血球がまだ動いていたという。硬直も来ておらず、腕は柔らかいままだった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
霊界五十年(長田幹彦)
『霊界五十年』は、長田幹彦が自らの心霊体験を一人称でつづった随筆集である。霊媒亀井三郎の実験に立ち会った話に始まり、大正十四年に東京中央放送局で見た変死した技師の霊、自殺者の霊、神隠し、心霊写真、死者の霊との交わりなど、長年にわたって見聞きした出来事を語る。「亀井霊媒の実験」「放送局の幽霊」「霊界夜話」「幽霊のキスマーク」などの短い章を連ね、心霊研究の知人や医師との問答を多く交える。