祝言の床で斬ったお梅と喜兵衛の首
どんな伝承か
第二幕の終わり、お梅との祝言を挙げた伊右衛門は屏風を開け、床でうつむく花嫁に顔を上げよと声をかける。顔を上げた花嫁はお岩の顔となり、守り袋を差し出して恨めしげに見つめ、けらけらと笑った。ぞっとした伊右衛門が抜き打ちに首を落とすと、それは本物のお梅の首で、鼠が群がり出た。慌てて舅の喜兵衛を揺り起こすと、その顔は小平の顔で、抱いた赤子を食い殺したように口は血だらけ、旦那さま薬を下されと言う。執念めと斬り捨てると、落ちたのは喜兵衛の首で、蛇が一匹まとわりついてうごめいていた。
原典より
第二幕の終り、早くも、お岩と小平の幽霊が、お梅に、あるいは喜兵衛にのり移り、それを伊右衛門が切り殺してゆくのである。—— 日本の幽霊たち ― 怨念の系譜(阿部正路) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の幽霊たち ― 怨念の系譜(阿部正路)
『日本の幽霊たち――怨念の系譜』は、阿部正路が書きおろした日本文学の幽霊論で、刊行は日貿出版社が手がけた。『竹取物語』『源氏物語』『平家物語』などの物語、『日本霊異記』から『遠野物語』『聴耳草紙』に至る説話、能と歌舞伎、さらに三遊亭円朝・泉鏡花・森鴎外・小泉八雲らの近代の作品に現れる幽霊をたどり、怨念の系譜として読み解く。第一章で幽霊の時・季節・姿・場・目的を論じ、終章で稲生屋敷の物怪や百鬼夜行など幽霊の周辺に及ぶ。